第4章 悪魔研究と医学 n.7 - 魔女術に対する信仰中世における精神異常者(狂人)の治療法(treatment 取り扱い方)と密接に関係していたのは,魔女術(魔女の魔術)に対する信仰であった。聖書には次のように書かれている。「汝、魔女を生かしておくべからず」(「出エジプト記」第二二章一八)と書いてある(注:"suffer" はここでは「許す(文語体)」/因みに Exod. = Exodus)。この章句やその他の章句を根拠にして,ウェスレー (John Wesley, 1703‐1791; 英国国教会の司祭でメソジスト運動と呼ばれる信仰覚醒運動を指導した人物。この運動からメソジスト派というプロテスタント教会が生じた。)は、「魔女術に対抗するのをやめること(giving up withccraft)は、結果として,聖書を捨てることである」と主張した。私は、彼の主張は(論理的に)正しかったと考える。(原注:我々がこの見解を受け入れないのなら,魔女術が衰えつつある時に魔女術(の存在)に対する信仰に反対して金をえることであり,「出エジプト記」中の「魔女(witch」と訳される言葉は実際は「害毒を及ぼす者」を意味することになる)(訳注:どういうわけかこの長めの原注は荒地出版社の訳書では訳出されていない! 実際、よくわかりにくい構文なので、私の訳も間違っているかも知れない。誤訳と思われた方はここの構文解釈についてご教授ください。matusitaster@@gmail.com @ を一つとって使用してください。)人々が聖書を信じていたうちは、人々は魔女に関する聖書の命令(注:魔女を生かしておくな!などの命令)を実行するよう最善を尽くした。聖書はいまだ倫理的に価値があると考えている現代のリベラルなキリスト教徒(たち)は、そういった(上記の)聖書の章句やかつて聖書を行為の指針として心から受け入れたために、苦しみ死んだ何百万もの無垢な犠牲者のことを忘れがちである。(訳注:荒地出版社の津田訳では、witchcraft を「魔法」,sorcery を「魔術」と訳されている。ネット上には様々な説明や解釈ががあり,訳語は混乱している。ひとつだけ紹介しておくと,「邪術(じゃじゅつ)は、英語の sorcery に対応する日本語の文化人類学用語であり、呪術信仰において超自然的な作用を有すると信じられる呪文や所作、何らかの物を用いて意図的に他者に危害を加えようとする技術を指す。」いずれにせよ,津田氏のように sorcery を「魔術」と訳さないほうがよいことだけは確かなようである。)[参考:witchcraft (悪い)魔術,特に魔女が使う魔術/生まれつき身についているもの。 wizardry 男が使う魔法(手品は含まれず) sorcery 呪術(習得可能);邪術(じゃじゅつ) magic 魔法。広義な意味をもっており,手品も含まれる。/magician は魔法使いや手品師] |
Chapter IV Demonology and Medicine, n.7
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